it.story 紡ぎはじめた未来へのストーリー ルーツと本質と「hotel it.」

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ルーツと本質と「hotel it.」

旅行者でごった返す大阪の中心地から、程なく離れた閑静な場所。ここで今、新しいストーリーが紡がれはじめた。紡ぎ手となるのは、160の客室を備えるホテル「hotel it.」。“なぜここに?”と思われる方はもちろん、“何か新しい世界をのぞきたい”“毎日の生活をもっと楽しくしたい”、そんな気持ちをお持ちの方がいたらご一緒に、まだ知られざる「hotel it.」の扉を開けてみるとしよう。

続々と新規ホテルがオープンする近年。多様化の一途を辿るなか、もはや「ライフスタイル型ホテル」というのは定番ワードになった。ただそんな時代にふと考えるのは、「実際ホテルって、どのくらいライフスタイルになっているだろう?」ということ。たとえば旅行者の場合。まずは観光地の拠点という理由で選んだホテルにチェックイン。荷物を預けてすぐに外出。予定どおり行きたかったあの店を巡って、ガイドブックに載っている人気グルメを食べたら部屋に戻り、翌朝早々にチェックアウト。ひょっとしたら、これが一般的な滞在スタイルかもしれない。一方、地元に住まう方々の場合。近隣なんだしわざわざ行くことも、と入るのをためらい、出入りする旅行者とすれ違う毎日。う〜ん、これってどちらの場合も、ホテル=ライフスタイルという図式とは遠いように思える。

そこで「hotel it.」は考えた。ライフスタイルになり得るホテルって、どんなホテルだろう?

実は当ホテル、企画段階では“ちょっと上のビジネスホテル”という形態で話が進んでいた。経営するのは創業00年の 東ビルエンタープライズ」。すでに大阪で2棟のビジネスホテルを運営していることから、「3つめのビジネスホテル」をつくるという計画はごく自然のものだった。デザインが出来上がり「さあ名前を決めよう」というところで、大きく未知の方向に舵を取ることになったのだ。当社の河野浩子事業部長はこう振り返る。

「弊社はその昔、繊維問屋、いわゆるアパレル会社だったんです。『糸』の事業が始まり。のちにホテル経営を始めてそれが主軸になり、現在まで『ワンランク上のクオリティとホスピタリティを、ビジネスホテルに!』という理念で運営してきました。ただ今の時代、それだけじゃないよねという思いがどこかにあったんです。本当にこれだけでいいのかなと。そんな折、弊社の会長が、神戸で地域の付加価値を高める事業をされている坂野雅さん(arigato-chan代表)と出会い、彼に建設予定のホテルの名前を付けてほしいと依頼したのです。後日、坂野さんから挙げられたいくつもの候補の中に『hotel it.』という名前があり、合わせてコンセプトを聞いて感銘を受けました。

私は元々普通の主婦で、弊社の仕事に関わるようになったのも“脈々と続いてきた家業を手伝う”という気持ちでした。既存のホテルで接客業に携わり、とにかく毎日やるべきことをこなす日々。その中で『hotel it.』が向かう未来の話を聞いて、どこか腑に落ち、前に押し出されるような感覚を覚えました」

勘のいい人はもうお気づきかもしれない。「hotel it.」という名前、「イット」=糸。先代がはじめた繊維業のルーツがここに込められている。その訳とは……? ズバリ、坂野氏に聞いてみた。

「なぜit.なのかというのは、本当にシンプルな理由で。事業の始まりは糸であり、先代から現会長に、そして河野事業部長や現場スタッフ一人一人まで、時代を紡いでここまで来たんだなと感じたんです。まさに糸を紡ぐように。これからも続いていく「糸から人へ、人から人へ」という紡ぎにこそ本質があるんじゃないかと思いました。

だからこそ、新しくできるこのホテルとしては、まさにルーツや本質を、食べるもの、触れるもの、見るもの、聴くものなど多方面で人に伝え紡ぐことが、一個の核になったら面白いなと思ったんです。糸=it.はダジャレでもありますが、「That’s it.」とか「Let’s do it」「I love it.」など、「it.」という文字も、本質的なものを常に指しているように感じたんです」

おいしい物にもちゃんと理由がある。耳ざわりのいい音にも理屈がある。いいものには必ずルーツと本質がある。その本質に向き合い、人に知ってもらう場所になるというのが「hotel it.」の使命。旅行者も地元の人も気軽に入れて、来るたびに新しい発見に出会えるからこそ、頻繁に通いたい。「ホテルに求められるライフスタイルとは?」の答えは、そんな人と人が紡ぐ「hotel it.」のこれからの景色に見つけられそうだ。